公園・施設

【浦賀レンガドック】塀の向こうは異空間。巨大な造船所跡に圧倒

世界に4カ所しか現存しないレンガ積みのドライドック。その貴重な産業遺産が浦賀にあります。明治32年(1899年)に建造されてから平成15年(2003年)に閉鎖されるまで1,000隻以上の船の製造や修理を行ってきた歴史のある造船所です。

もともと浦賀では幕末に日本最初の洋式軍艦である鳳凰丸が建造され、勝海舟が乗った咸臨丸も、太平洋横断直前にこの地で修理が行われました。
造船にはもってこいの場所として、その後、1899年に本格的なドックが作られたのがこのレンガドックです。
ここでは戦後は数々の護衛艦やあの青函連絡船「十和田丸」も製造されました。

令和3年に住友重機械工業株式会社より横須賀市に寄付され、観光の目玉として整備を進めています。

浦賀ドックまでのアクセス

京急線浦賀駅までは、品川から快特で55分、横浜からは37分で到着。
古くから港町として栄えてきた浦賀は、江戸時代に伊豆の下田から奉行所が移ってからはさらに隆盛を誇り、嘉永6年(1853)のペリー来航、その後は造船の町として常に日本をリードしてきました。

浦賀駅

終点の駅なので、改札は前方一カ所のため、乗車の際は先頭車両に乗ると楽ちんです。
改札を出るとまず左に進みます。大きな工場とクレーンが見えてきます。
信号を渡って右方向に塀に沿って10分ほど進むと、入り口があります。

専門ガイドによる分かりやすい説明は、初心者やお子様でも満足

2022年1月23日までの土日祝は一般公開されており、ガイドツアーも実施されています。
本格的な研修を受けた専門ガイドさんの解説は、歴史に疎い方や小中学生でも興味深く聞くことができます。
※大人500円、小中学生250円

詳しくはこちら→MEGURU project

イヤホンガイドで聞き逃しなし!

イヤホンガイド

予定時間になったのでテント裏の集合場所へ。
参加者一人一人にヤホンガイドが渡されます。
イヤホンを耳にセットし、チャンネルを合わせると、ガイドさんの素敵な声が聞こえてきました。
これなら風が強い日や、列から少し離れてしまっても解説を聞き逃すことはありません。

浦賀ガイドツアー

しばし全体の概要や注意事項を聞いた後、ドック探検に出発です。

スケールの大きな遺構が次々に出現

浦賀ドックポンプ

早速、興味深い施設が目の前に現れました。
このポンプでドック内の海水の出し入れをしていたそうです。
8~9分間で1m水位を下げる能力を有していたそうで、だいたい3~4時間ほどでドックを空にできたそうです。

人力ウィンチ

これは何でしょう?
人力ウィンチとでも呼ぶのでしょうか。電動化される前はこの四角い穴に棒を差し込んで、数人かがりの人力で回して水門の開閉をしていたそうです。

ウィンチ

電動化されてからはこのウィンチで開閉していました。ずいぶん楽になったでしょうね。

浦賀ドック水門

水門の上を歩きます。安全のため立ち止まってはいけません。
高所恐怖症の方は少し足がすくむかもしれません。
左が浦賀湾、右がドック内部です。

レンガにも歴史的意味が満載

浦賀ドック全景

水門からのドック全景です。
全長約180m、幅25m、深さ10mです。
全部で200万個以上のレンガが使われているそうです。

浦賀ドック壁面

壁面は左側がレンガで右がコンクリートです。
操業当初はこのレンガの部分までがドックとして活躍していましたが、昭和に入って船が大型化し、それに伴い44mほど拡張した部分です。
本当は陸側を拡張したほうがコストが安く済んだそうですが、すでに道路が走っていたため許可が下りず、やむなく海側を拡張したそうです。

フランス積み

レンガの積み方にも何通りかあり、ここはフランス積みと呼ばれる配列で、レンガも向きを長い面と短い面交互に並べる積み方です。
これは、当初日本は造船所の建設にフランスから技術者を招いたことに由来し、富岡製糸工場でも見られます

浦賀ドック犬走り

ちょっと黒っぽいです。これは高温で焼いた「焼過(しょうか)レンガ」を使用しているためです。耐久性が高く、水中で使うにはこれが適しているそうです。
ちなみに、人が歩く部分は石が使われており、「犬走り」と呼ばれていますが、英語に訳すと「Cat Walk」になるそうです。

浦賀ドックタワークレーン

以前ここには高さ30m近くあった「タワークレーン(正式名称はハンマーヘッドクレーン)」が設置されていました。最大20tまで持ち上げられたそうです。
今は取り壊されてその残骸と、移動のためのレールが残っています。

浦賀ドックジブクレーン

高さ約5mで最大7tまで持ち上げられた「ジブクレーン」が現存しています。完成は昭和20年6月ですから、終戦間際の鉄などの物資が不足していた頃で、とても重要な施設だったことがわかります。

ドックの底は異空間

浦賀ドック盤木

今回のガイドツアーのメインとなる、ドックの底の探検です。
大きな盤木が並んでいて、まるで生き物のようで今にも動き出しそうな雰囲気です。
光の加減も午後の方が良いようで、この貴重なシャッターチャンスに、周りのお客さんも撮影に夢中になっています。

浦賀ドックしらはま丸盤木

盤木は船を乗せるために船底に合わせて配置されています。
閉鎖前、最後にメンテナンスを受けた東京湾フェリーの「しらはま丸」の形状が残っています。

浦賀レンガドック見学のまとめ

浦賀ドックは、 明治32年(1899年)に完成した120年目以上の歴史を有する遺構です。
美しいレンガ積みの構造物は、その壮大さから、一種の芸術作品といっても過言ではありません。
120年以上前の技術や、浦賀の繁栄の歴史に思いをはせ、あっという間に40分間のガイドツアーは終了しました。

現在、横須賀市では、この浦賀ドックを手軽にもっと多くの方に見学いただけるよう整備を進めています。
現在のところは、団体やツアーでは見学が可能なようです。問合せ→横須賀市企画調整課

施設情報

【住  所】神奈川県横須賀市浦賀4-7-1
【電  話】046-822-8173(横須賀市企画調整課)
【アクセス】京急線 浦賀駅より徒歩約10分
【公開時間】未定
【U R L】https://www.wakuwaku-yokosuka.jp/uragarengadock.php
※2022年1月現在の情報です。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。