仕事帰りに横須賀港近くのスーパーで夕食を買うのが日課の私は、猿島沖に初めてその船体を見たときは、想像以上の大きさに驚き、まるで海から迫ってくる光の巨大アトラクションのような印象を受けました。
毎日20時過ぎに現れるその姿を眺めることが日課になっていましたが、いつかはその巨大な船に乗って、太平洋の海風を受けながら九州へ渡ってみたいと少年のような夢を抱きつつ、ついにその夢がかなう日が来ました。
いつまでも少年の心を忘れない横須賀流星がレポートします。
新造船の船体は迫力満点
横須賀~新門司間を就航しているのは、新たに造船された「それいゆ」と「はまゆう」の2隻です。
ほぼ同じタイプの二隻はどちらも全長222.5mの大型船で、時速は約50kmの高速船です。
高速フェリーは航行時の安定性を維持するために船長が必要なんだそうです。
寄港地に由来がある船名
今回、私が乗船したのは「それいゆ」です。
二隻の船の名前の由来は、北九州市の花であるひまわりのフランス語「それいゆ」と、横須賀市の花「はまゆう」です。
覚えやすく、地元の方々にも親しまれる名前ですね。
全長はなんと222.5mで、太平洋を就航するフェリーの中で最も大きいそうです。
真新しい船体が照明を反射して眩しいほどです。
機能的な出発ターミナル
新規就航にあわせて建てられたターミナルは、近代的で清潔感にあふれています。
昼間の時間帯もオープンしていますので、船が停泊しているとき(主に月曜日)は見学がてら立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
旅の始まりは真新しいターミナルから
1階インフォメーションでは、当日の予約受付や旅行会社発行のクーポンの引き換え、各種問い合わせに対応しています。
ネット予約でe乗船券を発行されている場合は立寄る必要はなく、そのまま2階へ進みます。
導線は一方向に作られているので、迷うことなく待合室へ進めます。
待合室
深夜の出発でも困らない軽食コーナー
やはりオススメは海軍カレーパンですね。
営業時間 20:00~22:00
土産売店は横須賀を中心とした三浦半島の名物など、品ぞろえが充実しています。
営業時間 20:00~23:00
まるで空港の国際線ラウンジのようです。何もかもが新しくセンスが光ります。
就航を前にテンションMAXです。
いざ船内へ
23:00に乗船開始のアナウンスがあります。
自家用車を乗せない場合は23:00までに到着すれば大丈夫です。
係員がQRを読みとり、いざ乗船へ
長いタラップを渡るといよいよ船内です。
船からの眺望は絶景の連続
船上からゆっくり景色を楽しむことができるのが船旅のいいところ。
甲板に出て風に打たれているだけでも、雑多な日常から解放される気がします。
刻々と移り変わる風景を存分に楽しみました。
船上からの夜景
普段、見慣れている横須賀平成町方面の夜景ですが、船の甲板からの眺めはまた格別です。
定刻にターミナルを出港しました。時速約50キロで南西に進んでいきます。
猿島の裏から横須賀の市内を見るのは初めてです。夜景に浮かぶ猿島の影が幻想的です。
甲板で深呼吸
快晴の朝を迎えました。甲板からは雄大な太平洋の水平線が望めます。
心地よい風に打たれながら大海原を眺めていると、日頃の悩みなど小さなことに思えてきます。
10:00ころ横須賀港へ向かう姉妹船「はまゆう」とすれ違いました。
お互いに汽笛を鳴らして航行の無事を確認します。
17:30頃に豊予海峡を通過します。ここは愛媛県佐田岬と大分県関崎との間の海峡で、豊後水道の中で最も狭く潮の流れが速いことで有名な場所です。また、あの関アジ・関サバなど美味しいお魚が穫れることで有名な海域です。
季節や天気によっては素晴らしい夕日が拝めます。晴れた日に乗船した方はぜひ甲板に出てみてください。
様々なニーズにこたえる客室タイプ
船内の客室はツーリストクラスからデラックスまで、それぞれの目的に応じた4等級に分かれます。
新造船だけあって、どのタイプも現代の旅のスタイルにマッチした機能を取り揃えています。
プライベートが確保され快適なツーリストS
今回は個室タイプになっているツーリストSに宿泊しました。男の一人旅なら十分すぎる空間です。
基本料金から6,000円追加になりますが、船旅の長い利用時間を考えると割安だと思います。
ベッドは幅80cmなので大柄の男性は少し窮屈かも。
乗船当日の夜は荒れた天候で、船体が傾くことも何度かありましたが、恐怖を感じることもなく、また、船酔いもなく到着まで快適に過ごせました。
寒がりの私は少し寒く感じたので、1枚トレーナーなどあるといいかもしれません。
扉は予約時に発行されたQRコードで開閉しますので、荷物等の管理も安心です。
部屋の外に出る際は、そのQRコードを忘れずに。
デスクは作業に十分な広さがあります。誰にも邪魔されずに仕事に集中できます。
電源も2口+USBでバッチリ。
テレビは音が出ませんのでイヤホンで聞きます。ヘッドフォンの貸し出しもあります。
リーズナブルなツーリストA
ツーリストAの客室入口です。
東京九州フェリーには雑魚寝の2等客室はありません。2等寝台に相当するツーリストAは、写真のとおりカプセルホテルのような作りで、カーテンを閉めればプライベートな空間が確保されます。
(追加ルームチャージはありません)
上下段を互い違いに配置されていますので、二人で利用すれば個室に近い使い方ができます。
愛犬との船旅にもステートウィズペット(定員2名)
大切なペットと一緒に泊まれる客室です。
トイレ、シャワーブース、冷蔵庫を完備しています。
(追加ルームチャージ)期間A:32,000円 期間B:38,400円
その他の客室
デラックス(定員2名)
高級感のあるシックなデザインを基調とした全2室の洋室です。
バス・トイレに加え、専用テラスも完備しています。
(追加ルームチャージ)期間A:48,000円 期間B:57,600円
ステート(定員4名)
全室が海に面していて、船旅ならではの景色を楽しみながらごゆっくりとくつろげます。
(追加ルームチャージ)期間A:32,000円 期間B:38,400円
極楽すぎる展望大浴場
露天風呂とサウナも併設されている大浴場はとにかくオススメです。
当然利用者には大人気で、三度、四度と入る方が続出。
それでも湯舟が広いので、さほど混雑した状況は見られませんでした。
十分な広さの内湯
20人くらい同時に収容できる大浴場が完備されています。
シャワーの水量も多く、ストレスを感じません。
ジェットバスもありますので、ゆったりと日頃の疲れを癒すことができます。
海と一体となる展望露天風呂
露天風呂は少しぬるめのお湯ですが、その分、長時間入っていられます。
真上には太陽、右手には四国の山々。そして心地よい海風に打たれながらの入浴は至福のひと時でした。
大海原を眺めながら汗を流す快感
大浴場にはサウナも完備。ここからの眺めも最高ですので、つい長時間入りすぎてしまいそうです。
脱水にならないように事前の水分補給も忘れずに。
大浴場のロッカーの利用には100円硬貨が必要です(返却式)。入浴時には忘れずにお持ちください。
※フェイスタオル・バスタオルは案内所でレンタルが可能です。(有料)
展望大浴場・サウナ
・乗船時~深夜1:30まで
・朝8:00~20:00まで
シャワールーム
・乗船時~20:00まで
ご当地グルメも楽しめるレストランは予想以上の味
船内のレストランは、寄港地である三浦半島や九州の食材を使用した四季折々のメニューが楽しめます。
海を眺めながら船旅ならではの贅沢な時間を過ごせます。
九州の名物料理も楽しめるレストラン
レストランもちろん眺めはばっちり。陸地側を見ながらのランチタイムです。
オーダー可能な時間が限られていますので注意が必要です。
昼食は一足先に目的地の名物「門司港レトロ焼カレー」(1,000円)をいただきました。
香ばしいルーとチーズが絡み合って、上品ながらパンチの効いた味を出しています。
ビーフも多く入っていて、最後まで飽きがこないクセになる味です。
夕食は「鹿児島産とんかつ定食」(1,200円)をいただきました。
とってもジューシーで、噛めば噛むほど旨味が溢れ出し、あっという間に完食です。
また、お米も美味しく炊きあがっていて、こだわりを感じました。
フェリーの食事は「高い」「まずい」というイメージがありましたが、長い船旅を楽しんでもらおうというフェリー会社の意気込みを感じるクオリティでした。
注文はタブレット、会計はセルフレジと、時代に合わせて非接触が徹底されています。
オーダー可能時間
夜食23:30~01:00
朝食8:00~9:00
昼食12:00~13:00
夕食17:30~19:00
乗船後の深夜も午前1時まで夜食を提供しているのは嬉しいですね。
コーヒーマシンもあり (1杯200円)、上記の営業時間外も座席利用は可能です。静かに読書したり景色を眺めたりとゆっくりできます。
※営業時間は季節・曜日や混雑状況によって違うので確認が必要です。
ランチのイチオシは船上バーベキュー
爽やかな潮風を受けながらの船上バーベキューは東京九州フェリーの名物です。
セットは1人前900円。とってもお得。
もちろんビールの販売もあります。お一人様もOKなので、ドライバーさんにも人気です。
たいへん人気があり、席数が限られているので抽選制となっています。
当日の朝の8:00までに4階の案内所に申し込みが必要です。
BBQ営業時間
12:00~14:00【完全予約・抽選制】
季節や天候によって開催しない場合があります。
船旅を彩る数々の充実した施設
単なる移動だけではない、旅の楽しさを膨らませてくれる施設が充実しています。
それぞれサービス提供時間が違いますので、計画的に船上ライフを楽しみましょう。
4~6階が吹き抜けになっている開放的なエントランス
吹き抜けのエントランスは、まるで高級ホテルのようです。
ピアノも設置されていましたので、イベント等で演奏されるのでしょうか。
どことなくリラックスできるいい香りが漂っています。
静かに景色と時間が流れるフォワードサロン
船の前方に位置し、船長気分で正面の景色を楽しめるサロンです。
読書など静かに過ごすのにおすすめです。
共有フロアはゆとりの空間
4階と5階の共有スペースには、椅子やテーブルが設置されています。
お菓子や飲み物を並べておしゃべりしたり、カードゲームを楽しんだり、思い思いの過ごし方ができます。
スクリーンルーム
ビーズクッションが配置されているスクリーンルームでは、プラネタリウムや映画が上映されます。
Yogibo初体験。その寝心地に感動です。
本日の上映はゴーストバスターズ。高校生の時に観に行った懐かしい記憶が蘇ってきました。でも、誰と行ったかはどうしても思い出せません。
上映の5分前に入場しましたら最後の1席でした。少し早めに入ってYogiboを確保することをお勧めします。
喫煙ルーム
喫煙ルームは各フロアに1箇所ずつ設置されています。
外部にはまったく煙が漏れず、近くでもタバコの匂いを感じませんでした。
キッズコーナー
小さなお子さんが遊べるキッズコーナー(現在休止中)
長い船旅中も飽きさせません。
アミューズメントルーム
カラオケをワイワイ楽しめます。洋上ではいつもと違った曲を歌いたくなるかも♪
スポーツジム
船旅はどうしても1日の歩数が少なくなりますね。
体を動かせるこの施設はとてもありがたいです。
ショップ
九州や関東のお土産の他、飲み物(お酒もあります)、お菓子やアイスやなど、太ってしまいそうな食べ物がいっぱいあります。
贅沢なワーケーション環境
リゾート地でのテレワークも認知度が高まっていますが、ここは究極のワーケーションです。
ちなみに船内Wi-Fiは航行中の7割ぐらいの時間帯で接続可能でした。また、4G回線(au)も弱い時もありながらもほぼ通信できる状態でした。
書類を読んだり、パソコンを操作したりするのに最適なコーナーもあります。
思考に行き詰まったら席を移動してリセットします。
こんな環境で仕事をしたら、いつもと違った壮大なプランが思い浮かびそうですね。
窓際のハイカウンターには、USBも使用できるコンセントが設置されています。
その他の設備
船内には乗船客が不自由しないように各種施設が整っています。
しっかり活用すれば陸にいる時と変わらない快適な旅を楽しめます。
標準価格の自動販売機
自動販売機コーナーではドリンクやカップラーメンを販売しています。
小腹がすいたときにとても重宝します。街のコンビニと同等料金なので割高感はありません。
ロッカー・セーフティボックス
船内は楽しみがいっぱいなので、あっちこっち動き回るときにロッカーを使うと安心です。
コインランドリー
洗濯機は高確率で稼働していたので、利用される方は多いようです。
うまく活用すれば荷物を小さくすることができますね。
新門司港のターミナル
横須賀港を出港し、翌日の21:00に新門司港に到着です。
現地スタッフの温かい出迎えを受けて九州の地に降り立ちました。
新門司港からはJR門司駅経由JR小倉駅行きの無料の連絡バスが出ています。
乗車完了次第出発になり、門司駅21:30頃、小倉駅に21:50頃に到着します。
この日は乗車待ちのタクシーはいませんでした。電話で呼ぶと10分くらいかかるようです。
横須賀フェリーターミナル情報
【住 所】神奈川県横須賀市新港町11番4
【電話番号】046-812-9110
【営業時間】9:00~24:00(月~土) 9:00~22:00(日・祝)
【アクセス】京急線 横須賀中央駅より徒歩約15分
【URL】https://tqf.co.jp/
※2022年4月現在の情報です。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
東京九州フェリー乗船体験のまとめ
21時間以上の船旅は、いったいどうやって過ごせばいいのか想像もつきませんでしたが、いざ乗ってみるととても快適で、あっという間に九州に到着しました。
仲間とおしゃべりを楽しんだり、ぼんやり海を眺めて景色を楽しんだり、のんびり大浴場でリラックスなどなど過ごし方はそれぞれ。あらためて船旅の楽しさを知りました。
新しい船だけあってとても機能的で、個室のドアはQRで開閉したり、船内のいたるところにコンセントがあり、スマホの充電やパソコンの使用にまったく不自由を感じません。
ワーケーションの場としても、しっかり環境が整っています。
みなさんもコロナ明けの旅行に、フェリーで行く九州の旅を加えてみてはいかがでしょうか。
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